のっと ばっど らいふ

「最高」を目指すのをやめたら、「悪くない」毎日が待っていた。

コンビニの店員さんが教えてくれた「働く」ということ。

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― PM 11:15

 

日中の暑さと授業でエネルギーを使い果たした私の足は、フラフラとコンビニに引き

 

寄せられていく。

 


食欲はない。けど、何か食べたいような、食べなきゃいけないような・・・なんてことを考えるのさえも、面倒くさい。おにぎりやお弁当なんて見向きもせず、アイスの前で私は足を止める。

 

「ねー!アイス、買おうよー♡」とはしゃぐ大学生カップルの声を聞きながら、アイスとスナック菓子を1つ手に取り、私はレジへと向かった。

 

 

「誰もいない・・・」

 

一応、辺りを見回してみるが、店員らしき人の姿はない。

 

 

「まいったな・・・」

 

疲れていたこともあり、少し苛立ちを覚えながら、レジの前で立ちすくしていると

 

 

『申し訳ございません!!!!!!!!!!』

 

店の奥のトイレの方からすごい勢いで、1人の男の子が走ってレジに戻ってきた。そういえば、さっき店に入る前に奥へ向かうこの子の背中が見えたような気がするなんて思いながら、商品をレジに置く。

 

大学生ぐらいだろうか。よほど慌てて戻ってきたのか、目の前の男の子は、さきほどの勢いのままバーコードをレジに通していく。その慌てぶりというか、一生懸命さに微笑ましさを感じながら、私はちょうどの金額をレジに置いた。

 

 

『383円ちょうど、えっ!あっ!』


お金を数え間違えたと思ったのか、先ほどまで接客用で少し緊張していた表情が、一瞬、素の表情に戻った。それに気付いて、照れたように笑った顔が可愛くて、私もついつられて笑った。

 

「こちらのレジ、どーぞー」

 

そのとき私の後ろに人が並んだのだろう。レジ横の扉が開き、けだるそうにした女性の店員が出てきた。

 


その動きの早さから考えれば、おそらく先ほど私がレジの前で、しばらく立ちすくしていた姿に彼女は気付いていたはずだ。でも、出てこなかった。
コンビニの仕事の振り分けやマニュアルがどうなっているのか私にはわからない。それに、この2人が先ほどまで何をしていたのかも、わからない。

 

けれど、お客さんを待たせてしまったことに慌てながら、必死にレジ打ちをする彼。レジに2人目のお客さんが並んだから、けだるそうに出てきた彼女。一見、対照的に見える2人だけれど、2人とも、自分の仕事をしていることに変わりはない。

 


「そっか、そうだよね」

 

こんなに疲れていたのは、正直、暑さでも授業でもなく、見当違いの動きばかりするとある社員に1日中、イライラしていたからだった。上司がいるときは仕事している風を装うけれど、いないときは全く動かない。そんな人。生徒に対しての情熱も全く感じられない。ただ、おしゃべりが好きなだけ。

 

恵まれているのか、それが普通なのかわからないけれど、今の職場にそんな動きをする社員は彼1人だけで、だからこそ目についてしまうし、ついイライラしてしまう。

 

なんとかイライラしないようにと昨日、こんな記事を書いてみたが、やっぱりそう上手くはいかず、イライラして疲弊しきっていた。

 

 

beingbe.hatenablog.com

 


職場では、ついつい他のスタッフと比べてしまい、全く彼のことを受けとめることなんてできなかったけれど、今、コンビニという全く違う職場で対照的に働く2人を目の当たりにしてみてようやく、頭ではずっとわかっていたけれど、なかなか受けとめられなかったことが、ストンと腑に落ちた。

 

「仕事に対する価値観は、人それぞれなんだ」と。

 

お金を稼ぐためだけに働いている人もいるし、自分のスキルを磨くため、お客様のため、働く人もいる。心から仕事を楽しんでいる人もいれば、決められた時間を耐えるだけの人もいる。

 

どれがいいとか、悪いとかなんてなくて、そういうものなんだ。そこに関して私がジャッジする必要はない。
ただ、私はやっぱり一生懸命に接客してくれた彼のような人が好きだし、自分もそうでありたいと思う。ただ、それだけでいいんだ。

 

 

「大丈夫ですよ。ありがとうございます」

 

少しはにかみながら、「すみません」と頭を下げる彼に、そうお礼を言って、私は家路についた。